『料理を作る事が楽しい』という気持ちを忘れない
尽きないチャレンジ精神
<profile>牟礼中学校出身 卒業後、大阪あべの辻製菓専門学校へ進学後し、ホテルニューオータニに入社、5年間の勤務後、レストラン、結婚式場、個人店などで修業、改めてホテルでの仕事に魅力を感じ、マンダリンオリエンタル東京に入社、2年間の修業後、アマン東京のオープニングスタッフとして転職、1年半後に退職し、2016年パティスリー リュ・ドゥ・シュープリーズをオープン。
【公式】Pâtisserie LIEU DE SURPRISE
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釣りが好きから料理の道に
中学校時代はあまり勉強のできる方ではなく、特に将来目指すものもありませんでした。ただ小さい頃から釣りが好きで釣ってきた魚を捌いたり、その延長で料理やお菓子を作っていたので家庭科の成績は良かったと思います。中学3年の時に担任の先生に食物科がある事を聞かされ、それを機に食物科に入学することを目標に勉強をするようになりました。食物科に入学した当初はフレンチのシェフを目指していましたが「アメ細工」の本との出会いがきっかけでパティシエを目指すようになりました。
作った料理の先には食べる人がいる
最初に就職したホテルニューオータニでは、すぐにお菓子が作れると思っていましたが、配属先はバンケットサービス(宴会場でのサービスマン)でした。同期の社員が100人ほどいる中で、日本料理・西洋料理・中国料理・パティシエ等の調理希望者は約50人、そのほとんどがレストラン、カフェ、宴会場でのサービスマンとして配属されました。当時は納得できない思いもありましたが、ただお菓子を作るだけではなく、作った料理の先には必ず食べる人がいる事を知ることができた意味深い期間だったと思います。
念願のパティシエとしてスタート
2年目からはパティシエとして本配属となりました。最初は焼き場のポジションで毎日先輩たちが使う大量の卵を割ったり、何種類ものプリンのネタを仕込んだりと日々仕事をこなす事に精一杯でした。それでも一つでも新しい仕事を任せてもらえるように、自分なりに試行錯誤して仕事に取り組むように心がけました。2年目はグラシエ、3年目4年目は生菓子に配属されるなど、着実にスキルアップすることができました。また同時にアメ細工のコンテストにも積極的に挑戦しました。
パティシエでも職場によって…。
最初のホテルを辞めた後、町のレストランや結婚式場で仕事をしながら休日は他店で研修をしながらスキルアップに励みました。その後、26歳で企業傘下のケーキ屋の雇われシェフというチャンスをいただきました。挑戦したものの失敗と挫折の連続でした。ただこの時の経験や人脈は普通にパティシエの道を歩んでいるだけでは経験のできない財産となりました。同じパティシエの仕事と言えど、レストランではアシェットデゼール(皿盛りデザート)を作り、結婚式場ではウェディングケーキやデザートビュッフェ、個人店では経営、従業員の教育、衛生管理、仕入れ、OEM(外注)など、多岐にわたり仕事を経験することができました。そして圧倒的な実力不足を感じ、改めてホテルでの修業を決意しました。そして選んだ場所がマンダリンオリエンタル東京でした。会社が外資系ということあって、従業員の大半が様々な経歴の方が集まっており、そのほとんどがフランスやベルギーなどの外国での仕事の経験を持つ人でした。同じお菓子作りにおいても、作り方や考え方の違いがあり、とても面白く充実した環境だったと思います。
パティシエとして18年間
東京での修業が11年、経営者として7年、改めて振り返るといろいろな経験をしてきた中で無駄になったことは何一つ無かったと思います。接客の経験もコンテストで毎日夜中から明け方までアメを引いた事も、時にはレストランで皿盛りデザートを作りながら前菜の仕込みをしたり、雇われのシェフとしてお店の経営に関わった事も、全ての経験があって今の自分の作るお菓子に繋がっていると思います。今は僕が新卒だった18年前と比べて働き方が大きく変わり、仕事が終わった後に残って練習をしたり、朝誰よりも早く出勤して仕事を始めたり、コンテストに励んでみたりと長い時間料理と向き合う事が難しい環境かもしれません。若い時に自分のために努力をしてきた料理人と、環境に合わせて仕事をしてきた料理人では30歳を超えた時に立場も給料も大幅に差が出ると思います。誰かの為ではなく自分の為にいろいろな事に挑戦してください。成功したこと失敗したこともきっと良い経験になります。最後に学校の授業で授業料を払って料理を作る事と、仕事として給料を貰って料理を作るという事は別の事です。料理を作るだけではなく雑務もあり、仕込みの合間に接客をしたり、そして大体が毎日毎日同じ事の繰り返しになります。でも僕たち料理人は料理が好きでその好きな事を仕事にしています。好きな料理を作ってお金が稼げ、さらに僕たちの仕事の先には食べたお客様の笑顔があると思えば、こんなに面白い職業は多くは無いと思います。最初は大変な事や怒られる事もたくさんあると思いますが、『料理を作る事が楽しい』という気持ちを忘れずに仕事を続けてください。